アメリカ テキサス州フォートワース郊外にある 小ぢんまりとした美術館です。20世紀を代表する建築家ルイス・カーン(1901-1974)による設計(設計したのは1960年代)です。この建物は数多くの写真集で目にしているので既に見慣れた建物だと思って訪ねたのですが、体感してみないとわからない建築だと思い知らされます。これほどシンプルでありながら緊張感と居心地の良さを与える建築に出会うことはそうそうありません。 この建物のすばらしさは、構造や設備がデザインと見事に統合されていることです。これは本来当然のことなのですが、建築家はともするとデザイン優先となり、構造や設備を後から考え勝ちになるものです。建築には技術と精神性のバランスがとても大切であることは頭では解っていても なかなかこれが難しいものです。それがこの建物では、全くの隙がないくらいに計算しつくされた上で それを感じさせないように存在しています。一見地味なこの建物に数多くの建築家が魅了されるのは、簡単にはたどり着けない「真の建築の境地」を味わうことができる稀有な建築だからではないか と思いました。