スリランカを代表する建築家であるジェフリー・バワ（1919-2003）は、現在では世界中に広まったアマンリゾートにも大きな影響を与えたといわれる建築をスリランカ国内に数多く設計しています。バワの建築の特徴は周囲の自然と建築との融合といってよいでしょう。特にヘリンタス・カンダラマホテルは、スリランカ中央部にある世界遺産シーギリアロックを遠くに見渡せる森の中に溶け込むように建っており、自然との共生を見事に表現した居心地のよい空間を創っています。
ヘリンタス・カンダラマホテル
ルヌガンガ －バワの理想郷－
海沿いの町ベントータから車で10分ほどの静かな場所にバワが広大な土地を購入し、理想郷として設計した庭園と建物があります。自然の地形に合わせて建物が造られ、庭園と建物の関係は見事に融合しています。なんとも美しいバワのセンスを感じることができる場所となっています。ここは見学だけでなく、宿泊も可能です。
ベントータのホテル
郷土スリランカを愛するということ
リゾートホテルの本質を考えてみたとき、その場所の自然をいかに魅力あるものとして見せ、人々に体験させるかということに尽きると思うのです。一般的に大規模リゾートホテルチェーンのような建物は建築物自体のインパクトや付加施設や設備などを充実させることに頼る傾向にあるように思えます。しかし、バワの建築はこの本質にのみしか興味がないかのように、そして建築はそのための装置に過ぎない・・ と言っているかのように建築自体はそっけない造りをしている場合も多く見かけます。 バワは郷土スリランカを本当に愛し、その魅力を引き出すための建築を造ることに専念した建築家だと感じます。そのために必要なのは、建築自体のカタチやインテリアの装飾ではなく、建築と自然を結びつける部分が大切で、そこをいかに豊かな空間にするかを常に考えていたのだと思います。バワの描く設計図面には、間取り図と同時に周囲の植栽までが細かく記載されています。常に建物と同時に樹木の大きさや形まで考えながら設計していたことがよくわかります。
