アメリカ サンフランシスコの市街から北に車で3時間ほど走った海沿いにシーランチという名前の別荘地帯があります。ここにアメリカの建築家チャールズ・ムーア(1925-1993)が設計した このコンドミニアム(アメリカの集合住宅のこと)は1960年代のもので 既に半世紀以上をこの荒々しい自然と対峙し続けています。ムーアの建築は写真集で見る限り、古典主義建築の引用とか 建築界の一時流となっていた様式建築が多いように感じられ、どうも私の興味をあまりそそらなかったのですが、この建物だけは実際にみてみたいと思っていました。9戸の住戸で構成されて、それぞれ所有者がいるのですが、そのうちの2戸は所有者が使用していなければ、見学だけでなく、宿泊も出来るという情報を得て、2泊することができました。泊ったのは「ムーア9」という 写真集などにも必ず登場する住戸です。
なんといってもこの立地ですが、太平洋の荒波が押し寄せ、暴風も吹きすさぶ崖の上の斜面という凄い立地です。この斜面に海風を受け流すように傾斜した屋根がこの景観にうまく馴染んでいます。ムーアはこの建物を設計する際に、ランドスケープデザイナーらと共にこの環境について徹底的に研究したそうです。 内部空間もこの傾斜屋根を活かして 天井の傾斜を利用して空間に変化と奥行きを感じさせる見事な構成となっています。 室内の仕上げは本当にザックリとしていて、詳細な納まりなど 気にしていない といった感じです。 しかし、それがこの荒々しい環境にたたずむ力強い建築の姿として 妙にマッチしています。 この室内空間はとにかく居心地が良い。特に大きなブルーのクッションベンチともなっている出窓の気持ちのよいこと。この出窓で大自然を眺めながら、一日中ゴロゴロとしていたい気分にさせてくれます。 ここを訪れる際はこの住戸に泊まることをお勧めします。